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マニュアル整備の進め方
#1. 基本方針
マニュアルが未整備の状態で育成を始めるにあたり、次の3つを原則とする。
| # | 原則 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 完成を待たない | 完璧なマニュアルを先に作ろうとすると、永久に着手できない |
| 2 | 教わった人が書く | 教えた人が書くと、前提を省いてしまう。分からなかった人が書くほうが分かりやすい |
| 3 | 使われないものは作らない | 誰も見ないマニュアルは、作った時間だけが損失になる |
原則2が、教育担当の負担を最も下げる。新人にマニュアルを書かせることは、手抜きではなく、理解度を測る手段でもある。 書けない箇所は、理解していない箇所である。
#2. 全体の流れ
【STEP 1】 業務の棚卸し(教育担当・30分)
↓
【STEP 2】 優先順位づけ(定型業務から)
↓
【STEP 3】 教えながら、本人に書かせる
↓
【STEP 4】 教育担当が添削する(1本15分)
↓
【STEP 5】 次の人が使い、詰まった箇所を追記する
↓
STEP 5 を繰り返して育てる
#3. STEP 1:業務の棚卸し
教育担当が、自分の1ヶ月の業務をすべて書き出す。30分で、箇条書きでよい。 きれいにまとめようとしない。
書き出す観点:
- 毎日やっていること
- 毎週やっていること
- 毎月やっていること
- 案件が来たときにやること
- 誰かに聞かれて答えていること
#4. STEP 2:優先順位づけ
書き出した業務を、次の3分類に振り分ける。
| 分類 | 定義 | マニュアル化の優先度 |
|---|---|---|
| 定型業務 | 毎回同じ手順で完了する | 最優先。 ここから作る |
| 半定型業務 | 手順はあるが、状況で判断が入る | 2番目。判断部分は「判断基準」として別途書く |
| 非定型業務 | 都度考える必要がある | 作らない。 コーチングで扱う領域 |
#4-1. 定型業務の中での優先順位
定型業務が複数ある場合、次の順で作る。
| 順 | 基準 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 頻度が高い | 使われる回数が多く、効果が大きい |
| 2 | 間違えると影響が大きい | 事故を防げる |
| 3 | 新人が最初に担当する | ティーチング初期に必要になる |
| 4 | 教える回数が多い(何度も同じ説明をしている) | 教育担当の時間が直接減る |
「何度も同じ説明をしている業務」は、最も費用対効果が高い。 そこから作ると、効果を実感できる。
#5. STEP 3:教えながら書かせる
#5-1. 手順
| 順 | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 1 | 実際にやって見せる(4ステップの①) | 教育担当 |
| 2 | 見ながらメモを取る | 本人 |
| 3 | 一緒にやる(②) | 両者 |
| 4 | その日のうちに、メモを手順書の形に清書する | 本人 |
| 5 | 翌日、手順書を見ながら独力でやってみる(③) | 本人 |
| 6 | 詰まった箇所を、手順書に赤字で追記する | 本人 |
| 7 | 教育担当が確認・添削する | 教育担当 |
4を「その日のうちに」行う。 翌日以降になると、細部を忘れる。忘れた箇所こそ、次の人が詰まる箇所である。
#5-2. 手順書のフォーマット
様式は templates/07_手順書テンプレート.md を使う。最低限、次を含める。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業務名 | 何の手順か |
| 目的 | 何のためにやるのか(これがないと応用できない) |
| 頻度・期限 | いつやるか |
| 前提・準備するもの | 必要なアカウント・ファイル・情報 |
| 手順 | 番号つきで、1手順1行 |
| 完了の判断基準 | どうなったら完了か |
| よくあるつまずき | 詰まった箇所と対処 |
| 判断が必要な箇所 | 迷ったら誰に聞くか |
| 作成者・更新日 | 誰がいつ書いたか |
「目的」と「完了の判断基準」を必ず入れる。 手順だけの文書は、少し状況が変わると使えなくなる。
#6. STEP 4:添削
教育担当は、1本あたり15分で添削する。書き直さない。 指摘して、本人に直させる。
添削の観点:
- 目的が書かれているか
- 手順が飛んでいないか(自分ができるからと省略していないか)
- 専門用語に説明があるか
- 完了の判断基準が具体的か
- 判断が必要な箇所に「誰に聞くか」が書かれているか
- 実際にこれを見て、知らない人ができるか
最後の項目が本質である。判断に迷ったら、その業務を知らない人に読ませてみる。
#7. STEP 5:使いながら育てる
マニュアルは、作った時点では未完成である。使われて初めて完成に近づく。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 詰まったら追記する | 手順書を見て詰まったら、その場で追記する。後でやろうとしない |
| 直したら日付を入れる | 更新日と更新者を残す |
| 間違いを見つけたら直す | 「気づいた人が直す」を全社ルールにする |
| 使われないものは削る | 半年間参照されていない手順書は、削除を検討する |
「気づいた人が直す」を明示的にルール化する。 作成者に許可を取る運用にすると、誰も直さなくなる。
#8. 保管場所とルール
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 保管場所 | 全員がアクセスできる共有の場所1か所に集約する |
| 個人の手元 | 手元に置かない。共有場所に置く |
| 命名 | 「業務名_手順書.md」のように、探せる名前にする |
| 形式 | 既存のツールでよい。新しいツールを導入しない |
| 索引 | 手順書が10本を超えたら、一覧を作る |
新ツール導入は、マニュアル整備の最大の失敗要因である。 ツールの習得に時間が取られ、肝心の中身が作られないまま終わる。今使っているもので始めること。
#9. 進め方の目安
| 時期 | 目標 |
|---|---|
| 導入から2週間 | 業務の棚卸しと優先順位づけを完了する |
| 導入から1ヶ月 | 最優先の定型業務3本の手順書ができている |
| 新人の1ヶ月目 | 教わった業務のうち、5本を本人が清書している |
| 新人の3ヶ月目 | 担当する定型業務の手順書が、ひととおり揃っている |
| 半年後 | 判断基準(半定型業務)の文書化に着手する |
最初の3本ができれば、あとは回り始める。 まず3本に集中すること。
#10. よくある失敗
| 失敗 | 対処 |
|---|---|
| 完璧に作ろうとして進まない | 8割で公開する。使いながら直す |
| 教育担当が全部書いてしまう | 本人に書かせる。添削だけにする |
| 作ったが誰も見ない | 「まず手順書を見る」を質問の前提(30分ルールの①)にする |
| 更新されず古くなる | 「気づいた人が直す」をルール化する。更新日を必ず入れる |
| 新ツールを導入して頓挫する | 既存ツールで始める |
| 非定型業務まで文書化しようとする | 作らない。コーチングで扱う |