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自宅作業(在宅)の考え方とルール

この文書の目的は、禁止することではありません。

自宅作業を認める条件と、なぜ出社を基本とするのかを、理由から説明することが目的です。

ルールだけを渡すと、「認めてもらえない」か「いつでも在宅でよい」のどちらかに誤解されます。


#1. 基本方針

#方針
1基本は出社とする
2子どもの急な事情など、やむを得ない場合は自宅作業を認める
3ただし、自宅作業が成立するには2つの前提がある(4章)
4前提が揃わない場合は、無理に働かず休むほうがよい

4を明記しておくことが重要です。 自宅作業を「休まずに済む手段」として運用すると、体調が悪くても子どもが熱を出しても働くことが当たり前になります。それは会社が望む状態ではありません。


#2. なぜ出社を基本とするのか

「決まりだから」では納得できない。 実際に何が変わるのかを説明する。

#2-1. 10名以下の組織で、出社が効いている5つのこと

#出社で起きていること在宅だと何が起きるか
1すれ違いざまの確認 「これ、こういう理解で合ってますか」が5秒で済むわざわざ連絡する手間が発生し、確認しないまま進めてしまう
2詰まりが見える 手が止まっている、表情が曇っている、が周りから分かる本人が言い出すまで、誰も気づけない
3雑談から出る情報 お客様の様子、進行中の話、何となくの気配が共有される決まったことしか伝わらない。背景が抜ける
4教える/教わる速度 見せる・一緒にやるが、その場でできる画面共有の準備が要る。手を取って教えられない
5聞ける空気 「今いいですか」が言いやすい状態は、同じ場にいることで作られる相手の状況が見えず、聞くこと自体のハードルが上がる

特に2と5が重要です。 本制度は「詰まりを早く出すこと」を軸にしています(30分ルール・詰まりの報告義務)。在宅では、この軸を支える環境が弱くなります。

#2-2. 誤解しないでほしいこと

よくある誤解実際
在宅だとサボると思われている思っていません。 上記5点は、真面目に働いていても起きることです
成果さえ出せば場所は関係ない個人の成果はそうです。ただし組織としての速度と情報共有は別問題です
出社は昔からの慣習慣習ではなく、10名以下という規模の事情です。人が少ないぶん、1人分の情報が途切れる影響が大きくなります
在宅を申請すると評価が下がる下がりません。 申請したこと自体を不利に扱いません(7-3章)

#3. 自宅作業を認めるケース

次の場合、自宅作業を認めます。遠慮せず申し出てください。

区分具体例
子どもの急な事情発熱・急病、学級閉鎖・休園、保育園等からの呼び出し、急な学校行事
家族の介護・看護急な体調不良への対応が必要な場合
本人の体調出社は難しいが、業務は可能な状態
交通機関・天候運休、災害警報など
その他事前に相談のうえ、教育担当・経営者が認めた場合

理由の詳細を説明する必要はありません。 区分と期間だけで十分です(templates/05_イレギュラー申請シート.md)。


#4. 自宅作業が成立する2つの前提

自宅作業は、次の両方が揃って初めて成立します。片方だけでは成立しません。

   前提①                        前提②
自分のリソースを          今すぐ進めるべき
自分で処理できる    +    業務が明確にある
(Lv.2以上)              (納期が迫っている等)
        ↓                        ↓
        └────────┬───────┘
                     ↓
              自宅作業が成立する

#4-1. 前提①:自分のリソースを自分で処理できるレベル

「Lv.2(自律遂行)以上」であることが条件です05_フォロワーシップと教育範囲の基準.md 5-1章)。

具体的には、次がすべてできている状態です。

  • 指示がなくても、その日やることの優先順位を自分で決められる
  • 月の業務量を自分で把握し、予定どおり進められる
  • 詰まったとき、30分で見切りをつけて自分から連絡できる
  • 完了の定義(次に渡せる状態)を、自分で判断できる
  • 遅れそうなとき、遅れる前に自分から伝えられる

なぜこれが条件になるのか

在宅では、誰も声をかけてくれません。「詰まっていることに、自分で気づいて、自分から出す」ことが全部必要になります。 これができない段階で在宅にすると、一日中止まったまま誰も気づかない、という事態が起きます。

これは能力を疑っているのではなく、在宅という環境が要求する水準の話です。

#4-2. 前提②:今すぐ進めるべき業務が明確にあること

自宅作業は、「休むと間に合わないものがあるから、場所を変えて進める」という手段です。

状況判断
納期が迫っている業務がある→ 自宅作業で進める
お客様を待たせている案件がある→ 自宅作業で進める
自分の完了が、他の人の着手条件になっている→ 自宅作業で進める
急ぎの業務がなく、在宅でできることも特にない休んでください(4-3章)
在宅ではできない業務しか残っていない→ 休むか、予定を組み替える

「何をやるか」が曖昧なまま在宅にしない。 申請時に、その日進める業務を具体的に書いてもらいます。

#4-3. 前提が揃わないときは、休む

これが最も伝えたい点です。

急ぎの仕事がないのに、子どもの看病をしながら無理に働く必要はありません。中途半端に働くと、看病も仕事もどちらも中途半端になります。

休むことは、権利であると同時に、正しい判断です。

休んで、翌日以降に予定を組み替えるほうが、結果的に速く終わります。

休む場合は templates/05_イレギュラー申請シート.md で、その週の予定の組み替えを一緒に決めます。


#5. 育成段階別の可否

前提①(Lv.2以上)と直結するため、育成段階によって扱いが変わります。

段階目安レベル自宅作業理由
ティーチング期(〜3ヶ月)Lv.0〜1原則不可「見せる・一緒にやる」が成立しない。詰まりを自分で出せる段階にまだない
コーチング期(〜6ヶ月)Lv.1〜3条件付きで可前提①のチェックリスト5項目を満たしていれば可。教育担当が個別に判断する
メンタリング期(6ヶ月〜)Lv.3前提②を満たせば、都度の判断は本人に任せる
既存社員Lv.3相当同上

#5-1. ティーチング期に事情が発生した場合

「原則不可」ですが、出社できないなら休んでください。 無理に在宅で作業させることはしません。

その日教える予定だった内容は、翌日以降に振り替えます。2週間以上の中断が生じた場合は、育成段階の期間を中断日数分だけ後ろ倒しします00_人材育成制度_全体設計書.md 9章)。遅れを本人の責任にしません。

ただし、次は在宅でも可能なため、状況に応じて相談してください。

  • 手順書の清書(教わった内容をまとめる)
  • 資料を読む、調べる
  • 週次報告シートの記入

#5-2. コーチング期の判断

教育担当が、前提①のチェックリスト(4-1章)で判断します。判断結果と理由を本人に伝えてください。

伝え方の例:「今の段階だと、詰まったときに自分から声を上げるまでが少し長いので、在宅だと一日止まってしまう心配があります。今回は休むか、半日だけ出社にしませんか」


#6. 手続き

#6-1. 事前にわかっている場合

いつやること
前週までtemplates/05_イレギュラー申請シート.md を提出する
提出時その日進める業務(前提②)を具体的に書く
教育担当前提①②を確認し、可否と対応を回答する

#6-2. 当日の急な事情(子どもの発熱など)

シートは後回しでかまいません。 まず連絡してください。

やること期限
1始業前に連絡する(電話・チャットいずれでも可)始業時刻まで
2「在宅で進めたいか/休みたいか」の希望を伝える同上
3その日進める業務を、教育担当と5分で決める始業後30分以内
4シートは、落ち着いてから提出する当日中〜翌営業日

手続きより、連絡が先です。 子どもの看病をしながらシートを書かせるようなことはしません。


#7. 自宅作業の日の進め方

出社時と違い、周りから状況が見えません。 その分だけ、見えるようにする手間を本人が負担します。

#7-1. 守ること

#やること理由
1始業時に「開始します/今日やること」を連絡するその日の稼働が周りに分かる
2終業時に「完了したこと/残ったこと」を連絡する進捗が見える
3連絡がつく状態を保つ(応答は業務時間内でよい)急ぎの確認が止まらない
4中座する場合は伝える(通院・送迎など)応答がない理由が分かる
5詰まったら30分ルールを守る(出社時より厳格に)在宅では誰も気づけない
6顧客情報・機密情報の取り扱いに注意する30_AIメンタリング_運用ルール.md 3-3章に準じる

#7-2. 会社が約束すること

#会社側がやること
1申請を出したことを、評価上不利に扱わない
2在宅の日でも、必要な情報を届ける(会議の内容、決まったこと)
3その日の予定を、教育担当が引き取るか再配置する
4事情の詳細(家庭・健康)を、周囲に共有しない。運用がどう変わるかだけを共有する
5在宅が続く場合、担当業務の組み替えを一緒に検討する

2を守れないと、在宅の人が情報から切り離されます。 これは会社側の責任です。

#7-3. 申請を不利に扱わない

申請回数を記録して評価に使うことはしません。

子どもがいる社員は、構造的に急な事情が発生しやすくなります。これを不利に扱うと、次が起きます。

  • 無理をして出社し、子どもの体調が悪化する
  • 申請せず黙って休む/連絡が遅れる
  • 定着しない

申請が出てくる状態のほうが、組織にとって健全です。


#8. 面談・報告の扱い

自宅作業の日に面談枠がある場合の扱いです(45_面談・報告スケジュール.md)。

在宅時の扱い
日次の完了報告そのまま実施(チャット等で可)
週次報告の提出そのまま実施(提出物なので影響なし)
週次面談(金 16:30)オンラインで実施。やむを得ない場合のみ、その週のうちに代替日を設定
コーチング半日(水 13:00〜)原則、代替日を設定する。 伴走(90分の同席)が在宅では成立しないため
隔週1on1オンラインで実施可
月次予定づくり・月末振り返りオンラインで実施可

コーチング半日だけは、オンラインで代替しないでください。 「横で見て、口を挟まない」が中核であり、画面越しでは機能しません。その週のうちに別日を設定します。


#9. 本人に伝えるときの言葉

制度として渡すだけでなく、入社1週目の行動規範の読み合わせで、口頭でも伝えてください。

「うちは基本は出社です。理由は、10名以下だと、すれ違いざまの確認とか、誰かが詰まってるのが見える、といったことで回っている部分が大きいからです。

ただ、お子さんの急な発熱とか、やむを得ないことは必ず起きます。そのときは在宅で進めてもらってかまいません。遠慮しないでください。申請したことで評価が下がることはありません。

ひとつだけ理解しておいてほしいのは、在宅は『自分で自分の仕事を回せる状態』が前提になる、ということです。在宅だと誰も声をかけてくれません。詰まったら自分から出す必要があります。だから最初の3ヶ月は、原則出社でお願いしています。できないと思っているのではなく、環境の話です。

それと、急ぎの仕事がないのに無理に在宅で働く必要はありません。そういうときは、休んでください。看病しながら中途半端に働くより、そのほうが結果的に速いです」


#10. 就業規則との整合

本文書は育成・業務運用上の考え方を定めたものです。次については、就業規則および法令との整合を確認してください。

確認項目確認先
在宅勤務規程の有無、労働時間の取り扱い就業規則
子の看護休暇・介護休暇との関係育児介護休業法/就業規則
通信費・光熱費等の費用負担就業規則・労使の取り決め
労災の適用範囲必要に応じて社会保険労務士等

本文書の運用が、法令上の休暇取得を妨げるものであってはなりません。 子の看護休暇等を取得できる場合、「在宅で働く」を強制することはありません。


#11. 見直し

タイミングやること
半年ごと(4月・10月)在宅の申請件数と、実際に困ったことを確認する
在宅が定常化した場合「基本は出社」の前提自体を見直す
社員数が増えた場合出社が効いている5点(2-1章)が変わるため、前提を再検討する

この文書は、10名以下という規模を前提にしています。 規模が変われば、判断も変わります。


#12. 関連文書

文書関係
50_行動規範_権利と義務.md「働く場所を選べる」権利と、対応する義務(成果と進捗が離れていても見える状態にする)
05_フォロワーシップと教育範囲の基準.md前提①のLv.2(自律遂行)の定義
45_面談・報告スケジュール.md在宅時の面談の扱い
40_報告運用ルール.md完了の定義、報告の3軸
templates/05_イレギュラー申請シート.md申請様式