横展開・外販に向けた設計方針
#1. この文書の位置づけ
本制度は、第一に自社の課題を解決するために作りました。外販はその後の選択肢です。
順序を逆にしないでください。 売ることを先に考えると、自社で使わない機能が入り、制度が重くなり、自社運用が続かなくなります。自社で回らなかったものは、他社でも回りません。
原則:自社で6ヶ月以上回り続けたものだけを、商品候補とする。
#2. すでに済ませてある準備
外販を見据えて、文書構成を次のように分離してあります。追加作業なしで、この構造は使えます。
| 区分 | ファイル | 内容 | 他社展開時 |
|---|---|---|---|
| 汎用部分 | 00〜80、templates/01〜08 | 会社名・業務名・事業内容を一切含まない | そのまま使える |
| 自社固有部分 | 90_自社設定シート.md | 会社情報/業務一覧/担当範囲/曜日時刻/ツール/就業ルール | これ1つを差し替える |
この分離があるため、他社に提供する際の作業は次だけになります。
① 汎用部分(19ファイル)をそのまま渡す
② 90_自社設定シートを、その会社用に記入してもらう(または一緒に記入する)
③ 業務一覧の棚卸しを支援する(60_マニュアル整備の進め方 STEP1〜2)
制度文書に自社固有の情報を書き足さないでください。 書き足した瞬間、この構造が崩れます。追記したい情報が出たら、90 に書いてください。
#3. 自社運用で記録すべきこと(実証データ)
商品化の可否は、自社での実測値で判断します。感想ではなく数字を残してください。
#3-1. 必ず記録する5項目
| # | 記録項目 | 取り方 | なぜ必要か |
|---|---|---|---|
| 1 | 教育担当の実投入時間 | 週次で実績を記録(templates/03 のセルフチェック欄) | 「6ヶ月で月1.5時間まで下がる」が本当かの検証。最大の訴求点になる |
| 2 | 段階ごとの実所要期間 | 卒業判定日を記録 | 3ヶ月/3ヶ月の設定が妥当かの検証 |
| 3 | 卒業判定の未達項目 | templates/03 の判定結果 | どの項目でつまずくかが分かれば、カリキュラムを改善できる |
| 4 | 教育担当への質問件数の推移 | 月次でカウント | AIファースト原則の効果測定 |
| 5 | 面談枠の実施率 | 実施/予定 で算出 | 制度が回るかどうかの最重要指標(下記3-3) |
#3-2. 併せて記録すると価値が高いもの
| 記録項目 | 取り方 |
|---|---|
| 見極めタイプ別の所要期間の差 | templates/06 のタイプと、卒業までの日数を突き合わせる |
| 手順書の作成本数と作成時間 | 90 の業務一覧のチェック欄 |
| 「なりたい姿の月1項目」の実施率 | templates/08 の月次表 |
| 制度導入前後の、教育担当の体感 | 半年ごとに一言で記録 |
#3-3. 面談枠の実施率が、成否を決める
この数字だけは、必ず取ってください。
| 実施率 | 判断 |
|---|---|
| 90%以上 | 制度は回っている。商品化を検討してよい |
| 70〜90% | 枠の設計が重い。時間を減らすか頻度を落とす |
| 70%未満 | 制度として成立していない。 商品化を検討する段階にない |
自社で守れない枠を他社に売ると、必ずクレームになります。
#4. 商品化を検討してよい条件
次のすべてを満たしたときに、初めて外販の検討に入ります。
- 自社で6ヶ月以上継続して運用できた
- 面談枠の実施率が90%以上である
- 1名以上がコーチング段階を卒業した(Lv.3到達)
- 教育担当の投入時間が、設計どおり逓減した(月20時間 → 月1.5時間)
- 制度の見直しを1回以上行い、削るべき項目を削った
- 教育担当が「次の人にも同じ方法でやりたい」と言える状態にある
「1名以上が卒業した」が最も重要です。 1周していない制度は、机上のものです。
#5. 商品形態の候補
条件を満たした場合の提供形態を、コスト順に並べます。
| 形態 | 内容 | 提供コスト | 単価目安 | 適する相手 |
|---|---|---|---|---|
| A. 文書一式の提供 | 汎用19ファイル+記入方法の説明 | 低 | 低 | 自社で組み立てられる会社 |
| B. A+導入支援 | 業務棚卸しの伴走、90の記入支援、初回研修 | 中 | 中 | 本命。 教育担当が兼務の小規模企業 |
| C. B+定期伴走 | 月1回、教育担当向けの相談枠 | 中〜高 | 中〜高 | 教育担当が孤立しやすい会社 |
| D. システム化 | 報告・面談・判定をWebシステム化 | 高 | 高 | 規模が大きい会社 |
#5-1. Dは急がない
紙とスプレッドシートで回らないものは、システムにしても回りません。
システム化は、次が確認できてから検討してください。
- 自社で1年以上、様式ベースで回っている
- 他社2社以上で、様式ベースの導入実績がある
- 「入力が手間」という要望が、実際の利用者から複数出ている
先にシステムを作ると、作ったが使われないものに開発費を投じることになります。
#5-2. 本命はB
小規模企業が本当に困っているのは、文書がないことではなく、業務の棚卸しができないことと面談枠を守れないことです。ここに人が伴走する形が、最も価値が出ます。
#6. 想定顧客
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 社員数 5〜30名 | 制度がない/作る余裕もない。かつ、人が増えて属人化が限界に来ている |
| 教育担当が兼務 | 専任がいる規模では、既に自前の制度がある |
| マニュアルが未整備 | 本制度は「並行して作る」前提で設計済み |
| 直近1年以内に採用予定がある/採用した | 課題が顕在化している |
| 業種問わず | 業務内容は 90 に外出ししてあるため、業種依存がない |
自社と同じ課題を持つ会社が顧客です。 自社で効いたことしか、他社に勧められません。
#7. 差別化できる点
一般的な研修サービス・人材育成コンサルと比べたときの違いを整理します。
| 論点 | 一般的なサービス | 本制度 |
|---|---|---|
| 対象規模 | 中〜大企業(専任担当がいる前提) | 10名以下・兼務担当を前提に設計 |
| マニュアル | 「整備されている前提」 | 未整備を前提に、並行して作る手順込み |
| AI活用 | 研修コンテンツとしてのAI | 教育コスト削減の手段としてのAI(30分ルール/エスカレーション基準) |
| 教育の範囲 | 曖昧なまま | Lv.0〜4で定義し、会社の保証範囲をLv.3と明示 |
| 期間の扱い | 「継続的に」 | 上限を切り、上限到達時の判断手順まで規定 |
| 担当者の負荷 | 明示されない | 週あたり時間を明示し、6ヶ月で逓減する設計 |
| 見極め | 適性検査・診断ツール | 日常の観察5観点。ラベル貼り禁止を原則に明記 |
最も差別化になるのは「教育担当の投入時間が逓減する設計」です。 小規模企業の教育担当が本当に困っているのは、終わりが見えないことです。3-1の①を実測できていれば、これが最強の訴求材料になります。
#8. HitoLink との関係整理
社内には別途、HitoLink-product-spec-v0.1.md(採用〜育成〜異動をつなぐ人材関係管理プラットフォーム構想)があります。現時点では別物として扱います。
| 項目 | 本制度 | HitoLink |
|---|---|---|
| 位置づけ | 自社の社内制度 | 商品構想 |
| 対象 | 自社(将来的に他社) | 他社への提供が前提 |
| 形態 | 文書・様式 | プラットフォーム |
| 段階 | 運用開始前 | アイデア検証用 |
#8-1. 将来的な接続の可能性
外販が現実味を帯びた段階で、次を検討する余地があります。今は決めません。
- 本制度の「育成の3段階」「仕上がりLv.0〜4」を、HitoLinkの育成モジュールの仕様として流用する
- 本制度の自社運用データを、HitoLinkの機能設計の裏付けとして使う
- 本制度(文書・伴走)を先に売り、HitoLink(システム)へのアップグレード導線とする
判断時期:本制度が自社で6ヶ月回り、4章の条件を満たした時点。
#9. 外販に進む場合の注意点
| # | 注意点 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 労務面の記述には踏み込まない | 05 7章の期間上限などは育成の到達基準。処遇の助言をすると、社労士法に触れる可能性がある。他社には「就業規則との整合は貴社で確認」と必ず明示する |
| 2 | 見極めを診断ツールとして売らない | 適性検査的な使い方をされると、本来の趣旨(教え方の調整)から外れ、トラブルの元になる |
| 3 | 「必ず育つ」と言わない | 会社が保証するのはLv.3まで、という線引きが本制度の要。効果を過大に約束しない |
| 4 | 自社の実測値以外を根拠にしない | 他社事例がない段階で一般論を語ると、導入後に齟齬が出る |
| 5 | 最初の1〜2社は、単価より学びを優先する | 自社以外での運用で何が起きるかを知ることが、次の改善につながる |
#10. 当面の進め方
| 時期 | やること |
|---|---|
| 今〜3ヶ月 | 自社で運用する。3-1の5項目を記録する。外販は考えない |
| 3ヶ月後 | ティーチング1周目の結果を見て、カリキュラムを修正する |
| 6ヶ月後 | 4章の条件を確認する。満たしていれば、外販の検討に入る |
| 6ヶ月後(満たした場合) | 形態Bで、知り合いの会社1社に無償または低額で試験導入する |
| 1年後 | 試験導入の結果を踏まえ、商品化するかを判断する |
3ヶ月間は、記録に集中してください。 記録がなければ、6ヶ月後に判断する材料がありません。