SHIGENOVA Co.
人材育成ナレッジベース
教育担当版
ホーム育成の3段階
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第2段階:コーチング 運用ガイド(3〜6ヶ月目)

  • 対象: ティーチングを卒業した社員
  • 期間: 2〜3ヶ月(標準:4ヶ月目〜6ヶ月目)
  • 目的: 自分で気づき、自律的かつ有機的に動ける状態にする
  • 教育担当の関与時間: 週半日(3〜4時間)を上限とする

#1. この段階の考え方

コーチングは「引き出す」段階である。答えを言わない。

ティーチングでは、教育担当が答えを持っていて、それを渡していた。コーチングでは、答えは本人の中にあるという前提で進める。教育担当の役割は、問いを投げ、本人が自分で言葉にするのを待つことだけである。

この切り替えは、教える側にとって難しい。理由は単純で、答えを言ったほうが早いからである。しかし、早く終わらせた分だけ、本人が考える機会は失われる。3ヶ月間、意識的に我慢する必要がある。

#1-1. ティーチングとの違い

観点ティーチングコーチング
主導権教育担当本人
話す割合教育担当8:本人2教育担当2:本人8
扱うもの手順・型判断・考え方
評価対象結果(できたか)プロセス(どう考えたか)
失敗の扱い事前に止める影響が小さい範囲では、あえてやらせる
進め方まずは型のとおりに自分なりのやり方を歓迎する(理由を説明できる限り)

#2. 週半日の使い方

「週半日」は、教育担当が本人のために空ける時間である。分割せず、まとまった時間として確保する。 15分×6回では対話にならない。

#2-1. 標準的な半日の構成(3.5時間の例)

時間内容進め方
30分週次の振り返り面談報告シートをもとに、本人に話させる
90分実務の同席・伴走本人が業務を進めるのを横で見る。口を挟まない
60分対話(テーマ深掘り)その週のテーマについて問いかけ中心の対話
30分次週の予定づくり本人に組ませ、教育担当は質問だけする

曜日を固定する。 「今週は忙しいから来週」を1度許すと、以後なし崩しになる。空けられないなら、コーチング開始を1ヶ月遅らせるほうがよい。


#3. 面談の進め方

#3-1. 基本の型

面談は、次の4段階で進める。

① 事実を聞く      「今週、何をやりましたか」
        ↓
② プロセスを聞く   「そのとき、どう考えて決めましたか」
        ↓
③ 別の可能性を聞く 「他にどんなやり方がありましたか」
        ↓
④ 次を決めさせる   「では、次はどうしますか」

②が最も重要である。 結果が良くても悪くても、必ず②を聞く。うまくいった理由を言葉にできていれば、次も再現できる。

#3-2. 沈黙を待つ

問いかけたあと、本人が黙る時間が発生する。この沈黙を埋めない。

10秒の沈黙は、教える側には長く感じられる。しかし本人は考えている。ここで「たとえばこういうことかな」と助け舟を出すと、その瞬間に思考は止まり、本人は「待っていれば答えが出てくる」と学習する。

目安として、20秒は黙って待つ。それでも出てこない場合のみ、問いを言い換える(答えを言うのではない)。

#3-3. やってはいけないこと

NGなぜダメか代わりにやること
答えを先に言う考える機会を奪う問いを投げて待つ
「なんでできなかったの」と聞く責められていると受け取られ、防御反応が出る「どこで詰まりましたか」と事実を聞く
誘導尋問(言わせたい答えに導く)本人は「正解当てゲーム」だと学習する本当に答えのない問いを投げる
面談時間を短縮する「自分は優先度が低い」と伝わる時間を守る。短くするなら事前に理由を伝える
結果だけを褒める/叱るプロセス重視の方針と矛盾する「その判断は良かった」とプロセスを評価する

#4. 問いかけ集

面談で使える問いを目的別に整理する。そのまま読み上げてよい。

#4-1. プロセスを引き出す

  • そのとき、どう考えて決めましたか
  • 判断の決め手になったのは何でしたか
  • 迷った選択肢はありましたか。なぜそちらを選ばなかったのですか
  • どこまでが分かっていて、どこからが分からなかったですか
  • もう一度同じ状況になったら、同じようにやりますか

#4-2. 視野を広げる

  • 他にどんなやり方がありましたか
  • その判断は、他の人の仕事にどう影響しますか
  • お客様から見ると、どう見えていると思いますか
  • 来月の自分から見て、今週の進め方は妥当でしたか
  • この業務は、何のためにあると思いますか

#4-3. 全体を俯瞰させる

  • 今月やらなければならないことを、全部で何割終えていますか
  • 残りの業務量と、残りの日数は釣り合っていますか
  • 今、一番リスクが高いのはどれですか
  • 前倒しできるものはありますか
  • あなたが2日休んだら、どこが止まりますか

#4-4. 詰まりを拾う

  • 今週、一番しんどかったのはどこですか
  • 誰かに聞きたかったけれど、聞けなかったことはありますか
  • やっていて「これでいいのかな」と思った場面はありましたか
  • 手が止まった時間は、どこで何分くらいでしたか

#4-5. 次につなげる

  • では、次はどうしますか
  • それは、いつまでにやりますか
  • そのために必要なものは揃っていますか
  • うまくいかなかったときは、どうしますか

#5. 月ごとのテーマ

漫然と面談するのではなく、月ごとにテーマを置く。

#5-1. 1ヶ月目(4ヶ月目):判断のプロセスを言語化する

項目内容
ねらい自分がどう考えて決めているかを、自覚できるようにする
主な問い「どう考えて決めましたか」を、毎回必ず聞く
到達状態判断の理由を、結果ではなくプロセスで説明できる
教育担当の注意この月は、判断の良し悪しを評価しない。言語化できたことを評価する

#5-2. 2ヶ月目(5ヶ月目):選択肢を複数出す

項目内容
ねらい1つの案に飛びつかず、比較して選べるようにする
主な問い「他にどんなやり方がありましたか」
到達状態想定外の場面で、対応案を2つ以上出せる
教育担当の注意出てきた案が的外れでも否定しない。「その案の良い点は何ですか」と聞く

#5-3. 3ヶ月目(6ヶ月目):全体を俯瞰し、自分で決める

項目内容
ねらい月単位で業務量を把握し、優先順位を自分でつけられるようにする
主な問い「残りの業務量と日数は釣り合っていますか」
到達状態前倒し・後回しの判断を自分でできる
教育担当の注意予定づくりを完全に本人に任せ、質問だけする

#6. 失敗の扱い方

コーチング段階では、影響が小さい失敗は、あえてやらせる。失敗しないと、判断の重みが分からない。

#6-1. 止める/止めないの基準

種類対応
顧客に直接影響が出る止める。 事前に指摘する
金銭が動く/契約に関わる止める。 事前に指摘する
データが失われる・戻せない止める。 事前に指摘する
社内で完結し、やり直せる止めない。 やらせて、あとで一緒に振り返る
時間を無駄にするだけ止めない。 ただし無駄が大きすぎる場合は事前に予算を切る

#6-2. 失敗後の振り返り

失敗が起きたら、次の順で扱う。順序を変えない。

  1. まず事実を確認する(何が起きたか。責める前に把握する)
  2. 影響範囲を確定し、必要な対処を先に済ませる
  3. 落ち着いてから、本人にプロセスを聞く(「どう考えて決めましたか」)
  4. 一緒に、次に同じ場面で使える判断基準を作る
  5. その基準を、マニュアルまたは行動規範に反映する

4と5を飛ばさない。 反省だけして終わると、同じ失敗が別の人で繰り返される。失敗は、仕組みを1つ増やす機会である。


#7. 「有機的に動ける」とはどういう状態か

目指す「自律的かつ有機的に動ける状態」を、観察可能な行動として定義する。評価のための基準ではなく、本人と共有するための言葉である。

状態具体的な行動
自分の担当を自分で回している指示を待たず、月初に自分で予定を組み、その通りに進める
前後の工程を意識している自分の完了が誰の着手条件になっているかを把握し、遅れそうなら先に伝える
詰まりを早く出す詰まってから抱え込む時間が短い(目安:30分で人かAIに投げる)
変化に対応する予定が崩れたとき、自分で組み替え案を作ってから相談に来る
周囲を見る自分の担当外でも、明らかに困っている人がいれば声をかける

これらは精神論ではなく、面談で確認できる行動である。卒業判定の際は、この表を使って具体例を挙げさせる。


#8. 教育担当のためのチェックリスト(週次)

  • 今週、決めた曜日に半日を確保できたか
  • 面談で、自分が話しすぎていなかったか(本人8割話せたか)
  • 「どう考えて決めましたか」を必ず聞いたか
  • 沈黙を20秒待てたか
  • 答えを言ってしまった場面はいくつあったか
  • 結果ではなくプロセスを評価したか

「答えを言ってしまった回数」を毎週数える。 数えると減る。


#9. 卒業判定

6ヶ月目末に、00_人材育成制度_全体設計書.md 6-2章の判定基準で確認する。

判定の際は、各項目について具体的なエピソードを本人に挙げさせる。「できています」という自己申告ではなく、「〇月〇日のあの案件で、こう判断しました」という事実で確認する。

合格後は、メンタリング段階(30_AIメンタリング_運用ルール.md)へ移行し、教育担当の関与を隔週30分まで減らす。関与を減らすことを、本人に明確に伝える。 何も言わずに面談が減ると、「見放された」と受け取られる。

伝え方の例:「ここからは、あなたが自分で回す段階です。面談は隔週30分に減らします。減らすのは、任せられると判断したからです。困ったときは、いつでも来てください」