SHIGENOVA Co.
人材育成ナレッジベース
教育担当版
ホーム育成の3段階
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第3段階:メンタリング・AI活用 運用ルール

  • 対象: 全社員(AIファースト原則は入社初週から適用)
  • 目的: 日常フォローの約半分をAIで代替し、人には意思決定事項のみを持ち込ませる
  • 教育担当の関与時間: 隔週30分+エスカレーション対応のみ

#1. この仕組みのねらい

この仕組みには、2つの目的がある。片方だけでは失敗する。

目的内容
① 教育コストの削減人に聞かなくても解決することを、AIで処理する
② 考える習慣の定着いきなり答えを人に求めず、自分で調べ、考える手順を挟む

②が本来の目的である。①だけを狙うと、「聞くな」という突き放しになり、本人は孤立し、質問が消え、問題が水面下に潜る。AIは、質問を減らす道具ではなく、質問の質を上げる道具として使う。


#2. AIファースト原則

#2-1. 質問の3ステップ

わからないことに出会ったら、必ず次の順序を通す。

① 自分で調べる
   マニュアル・過去の資料・過去のやりとりを確認する(目安10分)
        ↓ 解決しない
② AIに聞く
   前提・やりたいこと・試したことを添えて質問する(目安20分)
        ↓ 解決しない、または判断が必要
③ 人に聞く
   AIの回答と、自分の考えをセットで持ち込む

#2-2. 30分ルール

①②に使う時間は、合計30分を上限とする。

30分考えて解決しないなら、それは人に聞くべき問題である可能性が高い。時間を区切らないと、「自分で解決しなければ」と抱え込み、半日を溶かす人が出る。抱え込みは、質問より高くつく。

本人に伝える言葉:「30分やって解決しなかったら、すぐ持ってきてください。それは聞くべき質問です」

#2-3. 人に聞くときの型

③で人に持ち込むときは、次の4点を添えてもらう。足りない場合は、何を足せばよいかを具体的に伝えて戻す。

項目内容
1. やりたいこと何を達成したいのか
2. 詰まっていることどこで、どう詰まっているのか
3. 試したこと自分で調べたこと、AIに聞いた結果
4. 自分の考え「自分はこうしたほうがよいと思う」という案

4が最も重要である。 案がなくても構わないが、「案が出せなかった」ことも含めて言語化させる。差し戻しは冷たく行わず、「4だけ考えてから、もう一度来てください」と、何を足せばよいかを明示する。


#3. AIに聞くこと/人に聞くこと

#3-1. AIに聞いてよいこと(まずAI)

  • 用語・仕組み・一般的なやり方の確認
  • 文章の下書き、言い回しの検討、誤字チェック
  • 手順の確認(「〇〇するにはどうすればいいか」)
  • エラーや不具合の原因の当たりをつける
  • 資料・議事録の要約、たたき台づくり
  • 自分の考えの整理(「こう考えているが、抜けはないか」)

#3-2. 最初から人に聞くこと(AIを経由しない)

次の3種は、AIを経由させない。ここを曖昧にすると事故が起きる。

分類具体例
顧客・金銭・契約に関わる判断見積り、値引き、納期の約束、契約条件、クレーム対応
会社としての方針・優先順位何を優先するか、やるかやらないか、対外的な表明
本人の心身・人間関係体調不良、働き方の悩み、人間関係のトラブル、待遇の相談

3つ目を明記しておくことが重要である。「まずAIに聞け」というルールが、しんどさを言い出せない空気を作ってはならない。

#3-3. AIに入れてはいけない情報

分類
顧客の個人情報氏名、住所、電話番号、メールアドレス
契約・機密情報契約書の実物、価格表、未公開の案件情報
社員の個人情報給与、評価、健康状態
認証情報ID、パスワード、APIキー

聞きたい内容にこれらが含まれる場合は、固有名詞を伏せて一般化して聞く。それができないなら、人に聞く。


#4. AIへの質問の書き方

新人はAIへの質問が下手である。質問の仕方そのものを教える。

#4-1. 質問テンプレート

【前提】
私は〇〇の業務を担当しています。今は△△という状況です。

【やりたいこと】
□□を実現したいです。

【試したこと】
・〜を確認しましたが、〜でした
・〜を試しましたが、〜になりました

【聞きたいこと】
〜について、考えられる原因と対処を教えてください。

#4-2. 良い質問・悪い質問

悪い質問なぜダメか良い質問
「エラーが出ました」前提も内容もない。一般論しか返らない「〇〇の作業中に△△というエラーが出ました。直前に□□を変更しました。原因の候補を教えてください」
「メールの書き方を教えて」状況が不明「納期が3日遅れることを、お客様に伝えるメールの下書きを作ってください。相手は〜な方で、初回の遅延です」
「これでいいですか」判断基準がない「〜という目的でこの手順を考えました。抜けやリスクがあれば指摘してください」

#4-3. AIの回答をそのまま使わない

AIの回答は「たたき台」であり、「正解」ではない。 次を必ず本人に守らせる。

  • 回答をそのまま提出しない。必ず自分で読み、内容を理解してから使う
  • 事実(数字・固有名詞・手順)は、必ず一次情報で裏を取る
  • 自社のルールと違うことを言われたら、自社のルールが優先する
  • 「なぜそうなるか」を説明できないものは、使わない

最後の項目が重要である。説明できないものを提出させない。 これを許すと、AIを使って考えない習慣がつく。ねらいの逆になる。


#5. メンタリングの運用(6ヶ月目〜)

#5-1. 隔週1on1(30分)

項目内容
頻度隔週1回、30分。曜日・時間を固定する
目的進捗管理ではなく、支援が必要なタイミングを見つける
進め方業務の話は10分まで。残り20分は本人の状態・関心・将来の話
記録templates/02_1on1面談シート.md に、決めたことだけ記録する

この面談を進捗確認に使わない。 進捗は報告シートで見る(40_報告運用ルール.md)。ここで進捗を詰めると、本人にとって「詰められる場」になり、本音が出なくなる。

#5-2. 1on1で聞くこと

  • 最近、うまくいっていることは何ですか
  • 逆に、引っかかっていることはありますか
  • 今の仕事量は、多い・ちょうどいい・少ない、のどれですか
  • AIに聞いて解決したこと・解決しなかったことはありますか
  • 私(教育担当)に、やめてほしいこと・してほしいことはありますか

最後の問いは答えにくいが、続けて聞くことに意味がある。半年続けて初めて本音が出ることもある。

#5-3. 支援が必要なサイン

次の兆候が出たら、面談頻度を一時的に戻す(週1回に)。

  • 報告の提出が遅れ始める/内容が薄くなる
  • 質問が急に減る(詰まっていないのではなく、諦めている可能性)
  • 完了報告はあるが、成果物の質が落ちている
  • 遅刻・欠勤が増える
  • 「大丈夫です」が増える

サインが出てから理由を問い詰めない。 「最近どうですか」から始め、話す準備ができるまで待つ。


#6. エスカレーション基準

本人が判断せず、必ず上に上げるべき事項を明文化する。迷ったら上げる、を原則とする。

種類判断期限
顧客からのクレーム・苦情即エスカレーション気づいた時点ですぐ
納期に間に合わない見込み即エスカレーション遅れが見えた時点(起きてからではない)
金額・契約条件の変更依頼即エスカレーション回答する前
データの消失・誤送信即エスカレーション気づいた時点ですぐ
前例のない依頼エスカレーション着手前
自分の担当外への影響エスカレーション影響が見えた時点
手順どおりに進まないまずAI・調べる(30分ルール)30分経過後

「悪い報告ほど早く上げる」ことを、評価上プラスに扱う。 早い報告を叱ると、次から報告は来なくなる。この制度が続くかどうかは、ここで決まる。


#7. AI活用が定着しているかの確認

四半期に1回、次を確認する。

  • 人への質問に、「試したこと」と「自分の考え」が添えられているか
  • AIの回答をそのまま提出している場面がないか
  • 30分ルールが守られているか(抱え込みが起きていないか)
  • 逆に、AIに聞くべきでないことをAIに聞いていないか
  • 教育担当への質問件数は、半年前と比べて減っているか
  • 質問のは上がっているか(件数だけを成果としない)

最後の2項目はセットで見る。件数が減っても質が上がっていなければ、単に聞かなくなっただけである。 それは改善ではなく、悪化のサインとして扱う。